はじめに ソケイヘルニアは足の付け根(ソケイ部)が腫れる病気であり、小児外科で手術する病気のなかでは最も頻度が多い病気です。 2017年5月の記事(下記リンク参照)で、ソケイヘルニアの原因や治療法についてご紹介しました。 今回はその続きとなりますが、前回の記事も併せてお読みいただければ幸いです。 参考記事「ソケイヘルニアとは? -子供の足の付け根が腫れたときには-」 いつ手術するのか? ソケイヘルニアの治療の原則は、手術を行うことです。 ソケイヘルニアと診断されたら、 嵌頓 かんとん を起こすことがなければ急ぐ必要はありませんが、お子さんの体調のよいときに手術を予定しましょう。 手術後にいくらか運動制限があるため、夏休みなど長期のお休みを利用したり、運動会などの行事予定をあらかじめ避けておいたりすることもできます。 もちろんご家族の予定との調整も必要となります。 ただし、1歳未満の乳児では、自然に治る可能性を期待しつつ、嵌頓の危険性も考慮しながら、手術の時期をご相談して決めていきます。 嵌頓を起こすようであれば、手術を早めに行うことを検討しましょう。 手術方法の選択は?
更新日:2020/11/11 監修 岡 明 | 埼玉県立小児医療センター 病院長 小児外科専門医の藤代 準と申します。 このページに来ていただいた方は、もしかするとお子さんが「鼠径ヘルニアになってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。 このページでは、そのような方に役に立つ情報をまとめました。 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。 まとめ 小児の鼠径ヘルニアとは、 足の付け根の部分 ( 鼠径部 )におなかの中から腸などが飛び出し、膨らんだりへこんだりする病気です。 ふくらんだ部分が硬くて痛がっていたり、ふくらみが元に戻らないときには、腸がはまりこんで抜けなくなっている可能性があります。すぐに病院を受診してください。 小児の鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。放っておくと腸がはまりこんでしまう可能性があるため、手術で治すことがおすすめされています。 鼠径ヘルニア(小児)は、どんな病気? 小児の鼠径ヘルニアとは、 足の付け根の部分 ( 鼠径部 【そけいぶ】といいます)におなかの中から腸などが飛び出して、ふくらんだりへこんだりする病気です。 腸などが飛び出してはまり込み血のめぐりが悪くなってしまう(嵌頓【かんとん】と言います)と、腸などが傷んでしまう(壊死【えし】と言います)危険性があるので、その場合は 緊急手術 が必要です。 赤ちゃんの時期を除いてヘルニアの袋が自然に消えて完治することはありませんが、きちんと手術をすれば治る病気です。 鼠径ヘルニア(小児)になりやすいのはどんな人?原因は? 子どもさん全体の 1~数% が子どもの鼠径ヘルニアになり、 男の子 のほうが少しなりやすいと言われています。 ご家族、ご親戚に鼠径ヘルニアの方が多い、いわゆる"ヘルニア家系"の方がいますが、はっきりとした遺伝性は分かっていません。 子どもの鼠径ヘルニアは、おなかの壁の一番内側の膜(腹膜)が足の付け根の皮膚の下に伸びだし(腹膜鞘状突起【ふくまくしょうじょうとっき】と言います)、それがヘルニアの袋となってその中に腸などが入り込むことで起こります。 コラム:どうして鼠径部がふくらむの? 【941のイクメン徒然】4歳の娘が鼠径ヘルニアの手術をした話 - 家電 Watch. 腹膜鞘状突起は赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときはすべてのお子さんにありますが、生まれる前に多くのお子さんでは自然に閉じてしまいます。 この袋が自然に閉じなかったお子さんのなかで一部の方が、小児の鼠径ヘルニアになります。 鼠径ヘルニア(小児)になると困ることは?
利点 片側の鼠径ヘルニアを手術する際、おなかの中から反対側の腹膜鞘状突起が残っているかどうかを確認できます。もし反対側の腹膜鞘状突起が残っていた場合には、多くの先生は予防として反対側の腹膜鞘状突起も縛っておきます。このように、 反対側のヘルニアを予防できること が、腹腔鏡手術の一番の利点です。 傷が目立たないことも利点の1つです。 女の子の場合、腹腔鏡で、まれな卵巣や子宮などの病気が偶然見つかることもあります。 課題 手術が行われるようになってからの歴史がまだ25年程度であり、 手術を受けたお子さんが大人になったときのことははっきりとは分からない 、おなかの中の 合併症 (腸管などの損傷、術後の腸閉塞)や、反対側の予防的手術に伴う 合併症 の心配がある、などが挙げられます。 特に男の子では 精管を傷つけてしまう可能性 があるのではないかという心配があります。一方で、鼠径部切開法の方が精管などを傷つけやすいのではないかという意見もあります。 腹腔鏡手術を行うかどうかは、病院や先生によって考え方が異なり、女の子だけに行うという先生もいます。主治医の先生によくご相談ください。 手術の後に注意をすることは? 手術の合併症は? 鼠径ヘルニアの手術方法について。 - (旧)ふりーとーく - ウィメンズパーク. 術後の注意点は? 手術を受けた後の注意点としては、しばらく運動や入浴をひかえていただくことがあります。詳しくは担当の先生にお尋ねください。 手術の種類で術後の経過や注意点に大きな違いはありません。 手術の合併症は? 手術の合併症としては 出血 や 痛み 、一時的な 発熱 、 傷のトラブル などがあります。 まれに、男の子では術後に精巣が上がったり(精巣挙上)、小さくなってしまう(精巣委縮)ことがあります。非常にまれですが大きな合併症としては、膀胱や精管、卵管、卵巣などの損傷があります。 今まで分かっている範囲では、鼠径部切開法と腹腔鏡手術の合併症が起こる確率はほぼ同じです。 再発はあるの? 手術した側の鼠径ヘルニアの再発は1%以下といわれています。 片側の鼠径部切開法による手術の後には、10%程度の方に反対側の鼠径ヘルニアが生じると言われています。 腹腔鏡手術で反対側の予防手術をした場合は、反対側のヘルニアが生じるのは1%以下と言われています。 予防のためにできることは? 残念ながら、お子さんの鼠径ヘルニアを予防する方法はありません。 治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
質問: 薬で治療できますか? 回答: 薬では治療できません。 質問: 体を鍛えればヘルニアは治りますか? 回答: 基本的にヘルニアは、手術しないと治りません。いったん出来てしまったヘルニアは、自然には治りません(注1)。たとえ、戻ったとしても緩んでしまった筋膜は、多くの場合年齢に伴う変化なので体を鍛える訓練などで良くなることはなく、口が緩んで隙間が残っている限り、結局またヘルニアが出てきてしまいます。 (注1) 小児 鼠径ヘルニア は大人のものと違い、筋膜が緩んで出来たものではなく、睾丸(こうがん)が降りてくる際に、あるいは鼠径管という構造が形成されるときに、腹膜がついて出てきてしまい、外に袋「ヘルニアのう(嚢)」ができてしまったものです。したがって周囲の組織に緩みはありませんから、ヘルニアのう(嚢)を切除するだけで治ります。自然に治る子供もいます。大人の方でも、実は子供の頃にこうしたヘルニアがあって、自然に治っていたのだけれどもヘルニアを発症する方がおられます。 質問: ヘルニアバンドで治りますか?