たとえば美代子は、買い物のあと、一人レストランに入り、ふとグラッパを注文してみる。日常への、ささやかな造反。――が、ラストシーンで私たちはあざやかに足をすくわれる。「美代子はにっこりする。なんでもないじゃないの」変わらないことに安堵するのだ。これはまさに江國香織流のどんでん返しとも言えるだろう。私たちは途方に暮れる。この女はどこに行こうとしているのだろう? かくしてメビウスの輪が出現する。 そうメビウスの輪だ。江國香織の小説には裏がない。今回の読書で私はあらためてそのことに気づいた。 世の中の、たいていの小説には裏がある。たとえば、ある女の幸福な一日が描かれているとすれば、その小説は、「じつは幸福ではない女」の物語であったり、「本当は不幸なのにそのことに気づかないふりをしている女の物語」であったりするわけなのだ。何気なく挟み込まれる描写や、あるいは示唆に満ちたラストシーンが、そのことを読者に伝える。 が、江國香織の小説にはそれがない。どこまで読んでも表しかない。どこまで読んでも裏側に行けない。戻れない女たちの行き先を、安易に用意したりはしない。彼女たちは戻れない。江國香織はそれだけを書く。裏側などないのだということ。今いる面を、ずっと歩き続けなければならないということ。幸福でもなく不幸でもないまま、あるいは幸福であり不幸でもありながら。戻れない場所の記憶を手放すこともできずに。 「こまつま」の美代子は言う。「愚かで孤独な若い娘と、暇で孤独な主婦たちと――。かつて自分は後者だったし、さらに溯れば前者だったこともある」それでは今彼女は何者なのか? あるいは、「前進、もしくは……」の弥生は、空港にあらわれた米国人の娘に脈絡もなく告げる。「ゆうべ、夫が猫を捨ててしまったの」と。それで彼女は前進したのか? 『号泣する準備はできていた』(江國香織)の感想(462レビュー) - ブクログ. 彼女たちにはわからない。そのことが、「わからない」ということが、読者にはっきりと知らされる。曖昧さが、くっきりと鋭いナイフになって、私たちの胸を貫くのである。 (いのうえ・あれの 作家) 著者プロフィール 1964年東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、1992年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、1999年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2007年『がらくた』で島清恋愛文学賞、2010年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞を受賞。他の著書に『ちょうちんそで』『はだかんぼうたち』『なかなか暮れない夏の夕暮れ』など多数。小説以外に、詩作や海外絵本の翻訳も手掛ける。 判型違い(文庫) この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。 新刊お知らせメール 書籍の分類 ジャンル: 文学・評論 > 文芸作品 ジャンル: 文学・評論 > 文学賞受賞作家 発行形態: 書籍 著者名: え
【好きな小説の1文】 『私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。』 江國さんの「号泣する準備はできていた」より。 心臓が、はっきり死ぬ。 しかもねじ切れて死ぬ。 ねじ切れるという表現があまりにぴったりで、メモした文です。 この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか? 号泣する準備はできていた 江國香織. 気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます! メンタル山あり谷ありな私を、支えてくれると嬉しいです。 いろんなことを経験して、感じて、 そこから得た気づきをnoteで伝えていけたらと思っています。 よろしくお願いします。 画面の向こうですっごく喜んでます!ありがとうございます! 考えてばかりの大学院生。 気づいたことや考えたことをゆるりと投稿します。 /いつも素敵なnoteをありがとうございます。読む度に気づくことがあり、大事にしたいと思う言葉が見つかります。 /競技ダンス /読書 /22卒 /お菓子作り /コーヒー派 /犬派
空気感が違う気がする」 辺りはまだ昼下がりだというのに、薄暗く温度もだいぶ冷えて感じていた。 サリーは吸い込まれるように館にはいっていった。 そこにはロージーという占い師さんが目を瞑りながらまっていた。 「こんにちは。あの、占っていただきたいのですが、よろしいですか?」 サリーはいつもより弱気な声質でひそかに伺った。 「ようこそ。わたしの名前はロージーよ。あなたは?」 「あ、サリーといいます。年齢は、にじゅ」 「名前だけで結構よ」 かぶさるようにロージーに言葉を止められた。 「あ、はい。よろしくお願いします」 「何を占ってほしいのかしら? 恋愛? 仕事? はたまた人生?」 「えっと、全部ききたいのですが・・・・・・」 「なるほど。そうよね」と微笑みながら、ロージーはやっと目を開けた。 その瞬間ロージーの優しい目に鋭い驚きをサリーは見逃さなかった。 「あれ? 号泣する準備はできていた. なんか見えました?」 サリーはテヘヘと笑いながらロージーに問いた。 「あなた ・・・・・・ 近いうちに死ぬわよ」 「え ・・・・・・ ?」 サリーはわけが分からなかった。 「え? あのどうしてですか? なんで、わたしが? 人違いじゃ?」 「人違いなわけないわ。あなたを見ているんだもの。先が真っ暗闇に見える人は、未来が見えないのよ。なぜなら死んでしまう運命だから。あなたの周りは未来を感じさせない暗い暗いオーラが流れている。残念ですが」 「ちょ、まってください。どうしたら回避できますか? わたしまだ結婚も、なんなら恋愛すらできてなくて、もっとやりたいこともありますし」 サリーは言葉が溢れるように口から流れてきた。 「落ちつきなさい。運命はいつだってあなた次第。わたしから言えることはそれだけよ。悔いがある人生はもどかしい。やり残しちゃダメよ」 ロージーはそれだけ伝えると、サリーを帰らせた。 サリーはどん底の中にいた。 歩く足さえ方向が決められずモンゴルの大地をヨタヨタと歩いていたのだ。 涙さえ出ないこの感情。 無がうってつけのサリーがそこにはいた。 どれほど歩いただろう、変わらない景色の中をひたすら歩いていると一個のさびれた喫茶店のような店があった。 もしやここが最後の晩餐になるんではないかとすら思えてきた。 サリーはカラカラな喉に気付き、その喫茶店に迷うことなくはいっていった。 チリンチリン。 今にも鳴らなくなりそうな鈴が力なしになった。 そんな音にも幸せを感じ泣けてきそうだ。 下向き加減で席に座った。 メニューにはハンバーガーやピザなどサリーの好物が書かれていた。 目がかすれてくる。涙が溜まったせいだ。 手の甲で涙をガシガシ拭き、ピザとチーズハンバーガーを頼んだ。 「きっとわたしハンバーガーきたら泣いてしまうだろうな」と死に怯えて情けない自分に笑えてきた。 「お待たせー!
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大洪水でドリッサの親が亡くなったの? そんなにおっきな洪水だったの? なんにもしらなかった・・・・・・」 サリーはひとり床を拭きながら、ドリッサを思い浮かべまた悲しくなっていた。 なんだか占い師の言葉がついに本質をついてきたかという恐怖と、ドリッサのオーディションが心配でいてもたってもいられなかった。 そんな思いをかき乱すかのように、大音量のミュージックかと思うほどの雷と共に強気にも強気な雨が地面に到着し始めた。 「わ。ついにきた。私は生きなきゃ。ドリッサ。祈っている」 そうサリーは強く胸で思った。 ガタガタと古びた喫茶店は雨で恐怖の時間へと押し込まれていく。 木造建の天井は雨の抜け道となり容赦なかった。 次の瞬間、目で見ていたら失明するほどの光にモンゴルが包み込まれた。 ・・・・・・ そこからどれくらい経ったのだろう。 サリーが目覚めたのは太陽が降り注ぐ暑い時間だった。 「やっと起きたのかい? 一体どんだけ寝るんだよ。図々しいねまったく」 ぶたぶたしい声で嫌味を投げてきたのは、喫茶店のオーナーだった。 「あ! わたし。あれ? 号泣する準備はできていた 論文. ここは? わたし寝ちゃってましたか?」 「寝ちゃってたじゃないよ。ドリッサ、あんた雷には慣れてるはずだろ。それなのに雷で気絶したのかしらないけど雨水が溜まったとこで倒れてたよ」 「すいませんでした。ありがとうございます! ちなみにいまって ・・・・・・ 」 「もう一日夜はすぎた朝だよ。ほら起きたならさっさと喫茶店掃除してくれ。今日は晴天だからね、きっとお客がくるよ。ほら急いだ急いだ」 オーナーにせかされ、起きて布団を片付けていた。 するとラジオから流れてきたニュースに身を凍らせた。 「昨日起きました、嵐の影響でモンゴル発のロシア行き航空機が墜落しました。繰り返します、モンゴル発のロシア行きの航空機が嵐の影響を受け墜落しました。いま安否の確認を改めて進めていますが、今入ってきてる情報によると乗客含め235人全員が死亡しているとのことです。また詳しい情報が入り次第お送りいたします」 固まっているサリー。 「あぁ、あんな嵐の中飛行機出したのか。アホだねぇ。去年もそれで墜落したってのに、学ばないね世界は」とオーナーが独り言のようにぶつぶつ文句を言っていた。 もしも、この喫茶店にたどり着いていなかったら、もしも、ドリッサと出会っていなかったら、もしも、占い師が正直に言ってくれなかったら、サリーの生涯はほんとうに終わっていたのかも知れなかった。 「すいません!
村田 基本的におっさんが多いですね。中年以降40歳~60歳ぐらい。それ以上高齢になると、樹海に来るのも大変だから少なくなりますよね。1人で自殺しているのがほとんどですが、心中していたのもありましたね。あと、女の人は少ないです。 ――それはどうしてでしょうか? ハエの卵の涙を流す遺体も…! 日本で初めて「樹海の真ん中を歩いた男」村田らむ、樹海インタビュー! (2018年8月9日) - エキサイトニュース. 村田 それは、中高年男性の自殺率が高いというのに比例しているのだと思いますよ。珍しいので言えば、ビジュアル系ロックバンドの格好で自殺していた若い男の子がいましたね。 そういった格好で死ぬというのは、ナルシスティックな面があるんでしょうね。近くにクスリがいっぱいあったので、精神的に病んでいたのかもしれませんが。 ■死体が見られるおすすめのスポットとは? ――死体マニアの人に樹海以外で「ここに行ったら死体が見られる」というおすすめスポットはありますか? 村田 自殺のスポットというのは、たいがい高低差というか位置エネルギーを利用した場所が多いですよね。なので、崖とか団地とか飛び降りられる箇所が多いです。海外だったら韓国の麻浦大橋、アメリカのゴールデンブリッジとかが有名。そういった場所は、死ぬ確実性は高いのですが誰かに見つかる可能性も高いんですよ。死体は見つかればすぐに撤収されます。 ですが、首吊りのスポットは、めったにないですよね。普通の山林の中でも首吊りをする人はいますが、その場所を特定して見つけるのはめちゃくちゃ大変だと思います。 ――じゃあ自殺死体が集中して見られるといったら樹海となるわけですよね。 村田 首吊りスポットって、世界でも類を見ないと思うのです。青木ヶ原の森は、広いように見えて4キロメートル四方と小さいので発見もしやすいですよね。 ――そういえば、自殺者の遺体を回収するために年に1回行われていた樹海の大捜索は、今はどうなっているんですか?
「都市伝説スペシャル」SP!▽東京を"呪術"でまもる!?家康と1人の天才が張り巡らした「4つの仕掛け」▽真夏の特別企画!心霊スポットを"明るく"潜入リポート! ▽約400年前、家康と、ある1人の天才が東京を呪術で守るために、都内各所に"4つの仕掛け"を張り巡らせた!?そんな都市設計にまつわる「伝説」を、おなじみあばれる先生と、東京大学史料編纂所の教授が辿り、真相に迫る!点と点が線で結ばれた時、浮かび上がってくるものとは!
0 Twitter: セカンドチャンネル 『マジ?!MISTちゃんねる』も絶賛更新中!! MIST新ロゴデザインを使った『MIST公式グッズ』が大好評発売中‼️ ⬆️MISTグッズご購入はこちらから🙇♂️ 役者5人の心霊Youtuber【 MIST 】 題材にするのはあらゆる『恐怖』!! 各地の心霊スポットで宿泊、インタビュー、検証を重ね 心霊スポットの真実をお届けいたします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 三重県最恐との呼び声高いMISTも過去に訪れた事のある『有名心霊スポット』。 インターネットの情報では そこでは過去に本当か嘘かが解らない根拠のない噂で溢れている。 しかしメンバーの上野は「自分自身が行って検証をしたわけではないから、それこそ嘘かどうか何も解らない。」との事…。 なので今回、上野独自の方法で単独徹底再検証を決行‼️ 撮影を終えた上野が言い放ったのは… 「正直、何も起こらずロケが終わってしまうと思っていました。」 ※諸注意 当チャンネルでの動画は お祓い等の除霊は出来ておりませんので、万が一本動画をご視聴中もしくはご視聴した後での 霊障、体調不良、電子機器の故障等に関しては当チャンネルでは一切責任を負いかねます。 💙あおち() ❤️うえのさん() 💜くぼけん() 💚ゆうや() 💛ゆきと() ジャパントータルエンターテインメント(JTE)所属 ~今までの過去動画~ 【心霊ロケ系】 奈良県最恐スポットでトラウマ発狂の一泊「白高大神」 織田信長愛用の処刑場! ?MISTに憑く女性の正体は…「シガイの森」 焼身自殺の現場でまさかの宿泊!?そして遂に霊を目撃! 怪奇蒐集者 | バラエティ | 無料動画GYAO!. !「笠置観光ホテル」 リアル恐い間取りが存在した! ?松原タニシさんにも行ってほしい「怪奇現象多発の家」 過去最悪の記念企画 笠置観光ホテルで恐怖の降霊術「ひとりかくれんぼ」 富士の樹海の今は! ?日本最大の自殺スポット「青木ヶ原の樹海」 飛び降り自〇の名所と神の島で禁忌まみれの宿泊「東尋坊&雄島」 SIRENの聖地!埼玉の廃集落でゲームを完全再現「岳集落」 平成最悪の死体遺棄事件の場所に一泊二日「千早赤阪村」 大阪最恐スポットリベンジ!「しおき場」再び!! 心霊スポットの宝庫「香川最恐スポット三選」 殺人鬼から逃げろッ!!!「きもだメッセ」でビビり克服! 宿泊中断!! ?廃納骨堂&廃人形寺 キューピーの館「岡山最恐2選」 日本の社会の闇が生んだ悲しい事件「京都伏見介護殺人事件」 淡路島恐怖二選巨大観光廃ホテル&墓石の墓場 大阪で実際に起こった残虐な事件を紹介&宿泊 旧特攻隊基地を怪談王と共にいく 関西有名YouTuber「心霊番組「0」ゼロ」様と行く「廃別荘群& I荘」 呪いで消えた村!
村田らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター 1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)、『 樹海考 』(晶文社)、『 ホームレス消滅 』(幻冬舎新書)など。 トカナ TOCANA公式チャンネル 人気記事ランキング 不思議ベスト6! 総合 VIDEO TOPIC photo gallery