盛大な音が広間に響く。 キョトンとするヴェルドラ。その頬は何故か、真っ赤に腫れていた。 ヴェルドラは目をパチパチさせて、今何が起きたのか考える。 (あれ? 今、姉上が自分の意志で動いたような……。殺意は全くなかったが、我を痛めつけようという強い意志は感じたぞ!? ) ヴェルドラの胸に動揺が走る。 (ま、まさか!? そんな馬鹿な!! ) 認めたくない現実を前に、ヴェルドラの額から汗が一筋流れ落ちた。 「ねえ、ヴェルドラ。貴方、今。私をどうにかするって言ったのかしら? それとも、私の聞き間違いなのかしら?」 綺麗な顔に優しげな笑みを浮かべ、ヴェルドラに静かに歩みよるヴェルグリンド。 だが、ヴェルドラは知っている。 それは決して優しい生き物ではなく、この世の恐怖を具現化した存在である、と。 「は、はぅあ……!? 」 「はぅあ、じゃねーーーんだよ、この 愚弟 ( ボケ ) が!! 」 迫る拳。 ヴェルドラの思考回路は麻痺したように演算を停止し、回避行動に移れない。 悲しいかな、幼き頃より本能に刻み込まれた恐怖の記憶が、ヴェルドラの行動を阻害するのだ。 凄まじく重く、痛く、しかしダメージは一切ない攻撃がヴェルドラを襲う。 ヴェルドラが涙目になるのに、それほど時間はかからなかった。 「くっ……。可笑しいではないか! 何故姉上は動けるのだ? 操られているのではなかったのか!? 」 「黙れ! 私が何度も何度も同じ手に引っかかるとでも思ったのか? 私を舐めているの? ねえ、ヴェルドラ?」 「い、いや……。そのような意味では決して……」 震えながら、姉の怒りが治まるのを待つしかないと、ヴェルドラは悟った。 本当に理不尽なのは、『並列存在』を飛び越して、ヴェルドラの本体にまで 痛み ( ダメージ ) が来る事である。 その理由はと言うと……。 「ふむ、これは便利だな。なるほど、『時空連続攻撃』というのか。『並列存在』だろうが『多重存在』だろうが、時空を超えて攻撃を加える事が出来るようだな」 満足そうに頷くヴェルグリンド。 ヴェルドラはそれを聞き、真っ青になる。 ヴェルグリンドの言葉の意味は、分身一人を生贄に捧げて逃げるという手段が通用しなくなった、という事だから。 自身の絶対優位である『並列存在』が、たった今、無意味な能力へと転落したのだ。 まさに、ヴェルドラにとっての天敵が生まれたのである。 (うぉーーー、何という事をしてくれたのだ、リムルよ!! )
それに、ヴェルドラはどうなった? 《ここは、果ての世界です。或いは、"時空の果て"とも呼ばれる場所です。ヴェルドラは『虚数空間』に隔離し、完全に保護しておりますのでご安心を》 そうか、ヴェルドラさんは無事なのか。 良かった……って、え? 何にもないだだっ広い世界が、"時空の果て"だって? 確かに、時間も流れていない停止状態だし、空間の広がりを感知する事が出来ないけど……。 《はい。この世界では、時の流れは止まっています。そして空間の広がりは終息し、エントロピーの法則に従い虚無へと至りました》 至りました? まるで見てきたような物言いだな? 《その通りです。ユウキの攻撃により、我々は時空の彼方へと飛ばされました。星の寿命はとっくに尽きておりましたが、世界の崩壊へは至っていませんでした。その事から推測するに、ユウキは世界そのものを崩壊させる事は出来なかったのでしょう。連続時空体としての星を全て破壊した段階で、彼の寿命も尽きたのだと推測します。ですが、それで彼の望みが果たされたのかは判断出来かねます。その後は漂うように宇宙を彷徨い、この宇宙の終わりを見届けたのです》 ――シエルさんが何を言ってるのか、いまいち理解出来ん……。 宇宙の終わりを見届けた? 何を言っているんだ……? というか、そんな状態で生きている訳がないだろう。 吐くならもっとマシな嘘を――と思った所で、シエルさんが嘘を吐かないという事を思い出す。 たまに騙されたりしたが、それは嘘ではなく俺が勘違いした――というか、させられた――だけの話だし。 という事は、本当にここは果ての世界だと言うのか!? 《はい、その通りです。では早速ですが、この後はどう致しますか?》 どうする、とは? 《長き時が経っていますので、『虚無崩壊』のエネルギーが膨大に貯まっています。ヴェルダナーヴァは世界を創造した事で『虚無崩壊』を失ったようですが、リムル様には『虚数空間』があるので問題ありません。『虚数空間』は無限ですので満たされてはおりませんが、世界を何万回でも再構築出来る程度には充填済みなのです。付け加えるならば、リムル様に関わった者全ての記憶を再現し、限りなく当時と近い世界を意図的に生み出す事も可能です。どうされますか?》 えっ……? シエルに問われ、俺は絶句した。 そう、ここが"時空の果て"というならば、ベニマルやシュナ、テンペストの仲間達、ディアブロや悪魔達、ギィや魔王達、ラミリスやミリム、俺の愛した者達は全て、この世界のどこにも存在しないという事なのだと、ようやく理解出来たのだ。 つまり俺は、ユウキに負けたのだ。 「ふざけるな!!
心の中で絶叫するヴェルドラ。 姉であるヴェルグリンドに、そんな要らぬお世話をしたのは、親友であるリムル以外に考えられないのだ。 一頻りヴェルドラを殴って気が済んだのか、ヴェルグリンドはヴェルザードへと向き直った。 そして、「最高の場面のハズなのに……。お約束と違うではないか……」などとブツブツ呟いているヴェルドラに向けて、言う。 「黙れ、見苦しいぞ。私の弟なら、それ以上馬鹿を晒すなよ。ヴェルドラ、貴様に勇者は任せる。友達の大切な存在なんだろう? 精々、下らぬ失敗をしないようにしろよ。姉上は私が相手をします」 「ですが……」 「くどい! 二度も言わせるつもりか?」 「了解であります、姉上!」 最敬礼しつつ、ヴェルグリンドの言葉を了承するヴェルドラ。 姉に逆らう愚を冒すのは、馬鹿のする事なのだから。 ヴェルドラは殴られた頬をさすりつつ、勇者クロエに取り付いたルシアへと向かったのだった。 それを見やり、ヴェルグリンドはギィに向き直り言う。 「ギィ、貴様なら姉上の支配を解除出来るのだな?」 「ああ、出来るぜ。ただし、戦闘しながらじゃ無理だけどな」 「問題ない。勇者クロエは愚弟に相手をさせる。貴様は姉上の支配の解除に全力を尽くしてくれ」 ヴェルグリンドからの要請を受けて、ギィはほんの少しだけ考え込んだ。 解除は可能だろう。何しろ目の前で支配を行うのを見た事で、その原理は理解出来たから。 問題は、それに要する時間だった。 「いいか、今のオレでは解除に時間が掛かり過ぎる。とっておきの演算特化で解除するから、その間はオレの援護を期待するなよ?
最後まで、本当に手のかかる子だわね。 ――先生……? そう、そうだったのか……ここには、先生も……。 ――そうね。私も一緒に反省してあげます。決して孤独にはしないわ。 ――わかったよ。僕は一体どこで―― その言葉を最後に、ユウキの意識は完全に消えた。 俺が『虚数空間』を閉じたのだ。 脱出は不可能であり、俺が死ぬまで――或いは、死んだ後も――解放される事はないだろう。 そもそもの話、俺に寿命があるのかどうかも疑わしいのだけれども……。 しかし、最後にユウキと話していたのは―― もしそうならば、これは罰ではなく、案外ユウキにとっての救いであったのかも知れないな。 俺は感傷に耽るように、そんな事を思ったのだった。 こうして、最後の戦いは俺の勝利で終ったのだ。 書籍ですが、また重版がかかったそうです。 皆様の応援のお陰です。ありがとうございます!
株式会社ハーテック・ミワ 法人営業 ルートセールス・代理店営業 正社員 職種未経験歓迎 業種未経験歓迎 車通勤可 設立30年以上 第二新卒歓迎 公開・終了予定日: 2020/10/06 ~ 2020/12/29 更新日: 2020/10/05 求人詳細 企業情報 業界トップクラスの製品だから、自信を持って未経験でも提案できる!「コンプレッサって何?」そんなアナタも1人前に育てます★ 3つ のポイント 事前の会社見学可能、気軽にご相談ください♪ 福利厚生充実。安定感抜群の企業で腰を据えて働ける! 未経験でも安心の充実した研修とサポート体制 企業からのPRメッセージ 私たちが取り扱っているコンプレッサ。 皆さんにはあまり馴染みがないかも知れませんが、あらゆる業界の工場で必ずと言っていいほど広く使われている機械です。 私たちハーテック・ミワは国内25拠点のサービスネットワークを持ち、その技術力で、数多くのお客様に高い評価をいただいているリーディングカンパニーと自負しています。 業界ではちょっと知られた存在です。 営業の業務は、コンプレッサの更新やメンテナンスの提案はもちろん、周辺機器や省エネルギーのご相談まで、お客様に末永く寄り添えるような活動を行っています。 最初は製品の知識を身につけるため、社内やメーカーの研修を受け、基礎知識を習得。 その後、先輩に同行して営業ノウハウを学び、徐々に担当エリアを受け持っていただきます。 このようにサポート体制が充実しているので、未経験から無理なく活躍できます! 実際に今活躍している社員も異業種から転職してきました。 営業といっても、ノルマや目標と気負う必要はありません。 もちろん、ある程度個人で目標を立てていますが、営業所全体で数字を達成しようという雰囲気が強いです。 だからこそ、お互いのことを気にかけ、そしてサポートし合いながら、業務を進めています。 他部署とも連携しながら、一緒になって働く楽しさを実感できる、そんな職場です。 取り扱っている製品は、業界トップクラスの性能を誇る神戸製鋼所製・KOBELCOコンプレッサ。 自信を持って提案できる製品だからこそ、未経験からでも提案できるのです。 だからこそ、お客様とお話するための、そして社内でチームワークを大切に働くためのコミュニケーション力の方が大切かもしれません。 「人と話すことが好き」を活かせる仕事、ぜひ始めませんか?
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私たち大洋輸送株式会社は、創業以来40年にわたり、新しい時代の輸送、ハイテクノロジー・エージの化学輸送と共に歩んでまいりました。お得意先企業の技術革新が日進月歩で進展する中、単なるモノ輸送に安住する事なく、危険物の保管、容器のリサイクルなど、社会的ニーズへの挑戦を行っております。また全国ネットの輸送体制の整備など、新たな飛躍を目指して参る所存です。 タンクローリーによるファインケミカル、有機溶剤を全国ネットで配送する危険物輸送を行っております。自社で車両洗浄設備を有しており、清潔で安全な輸送が可能。プロとしての自覚が高いスタッフ、落ち着きのあるドライビングテクニックと作業態度には、お客様から大きな信頼が寄せられています。 大洋輸送株式会社はタンクローリーでの輸送が「安全 / 敏速 / 確実」を認知され、事業の拡大を続けています。 頑張る人にはやりがいのある待遇を、子育て等でマイペースでお仕事をする人にはシフトへの配慮など、各々にあった働き方で生き生きと輝ける職場です。 私たちとともに創造し、チャレンジしませんか? ■資料請求、お問い合わせの際は「個人情報保護方針」をお読みになり、同意のうえお問い合わせください。 ■回答に時間がかかる場合があります。お急ぎの方はお電話にてお問い合わせください。 TEL:06-6682-3185 〒559-0025 大阪府大阪市住之江区平林南1丁目1番7号 新着情報&お知らせ
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