投稿者:ライター 岡本優美(おかもとゆみ) 2020年8月10日 ウイスキー樽の中には天使が住んでいる、というと非科学的かもしれない。しかし、古くからウイスキー製造業者の間で「天使の分け前」という現象は知られている。現在でも発生する「天使の分け前」現象を解説しよう。 1. 天使の分け前とは?何のお酒に使われる?仕組みや言葉の意味を確認しよう 天使の分け前はウイスキーを作るときに必ず発生する現象だ。ここでは、それがどんな現象なのか解説しよう。 天使の分け前とは ウイスキーは醸造酒になったあと蒸留され、樽に入れて熟成されるが、このときにどうしても水分やアルコール分が蒸発してしまう。1年間に全体量の2%程度が蒸発によって減るといわれており、熟成が進むにつれて少しずつ原酒が少なくなっていく。この現象が「天使の分け前」と呼ばれ、英語では「エンジェルズシェア(angel's share)」という。天使の分け前が発生することで、ウイスキーはさらに香りが良くなるといわれている。 天使の分け前、その取り分は? 裏ドミノ新作『悪魔のささやき』にガーリックを限界まで追加してみた / 狂気のセクスタプルガーリック | ロケットニュース24. 冷涼な気候で湿度の高いスコットランド産のアイラウイスキーの天使の分け前は、年間1〜2%程度だ。しかし寒暖差が激しく乾燥地帯にあるケンタッキー州のバーボンウイスキーでは年間10%以上の分け前が取られることもある。これは気候の違いによるもので、ウイスキーの風味にも影響する。たとえば、バーボンウイスキーの場合はアルコール分よりも水分が飛ぶ。そのため熟成前と後ではアルコール度数が変化し、熟成が進むとさらに味わい深いものに仕上がるのである。 天使の分け前が起こるお酒 天使の分け前はが発生する原因は樽だといわれている。樽は木でできていて気体を通すため、水蒸気や揮発アルコールが樽の中と外を行き来できるのだ。そのため、同じく木の樽で熟成させて香りをつけるブランデーや焼酎、ワインにも発生する現象である。 2. 悪魔の取り分とは?言葉の意味や天使の分け前との違いについて解説 天使の分け前は戻ってこないが、悪魔の取り分は奪い返せる。ここでは、「天使の分け前」とは対照的な「悪魔の取り分」について解説する。 悪魔の取り分とは 天使の分け前はお酒が減る代わりにいい香りをもたらすが、悪魔の取り分は何も残らない。というのも、悪魔の取り分とは樽に染み込んだ原酒のことだからである。木製の樽を使う以上はどうしても起こってしまう現象で、英語では「デビルズカット(devil's cut)」と呼ばれる。 悪魔の取り分を取り戻すには 悪魔の取り分は実は取り戻すことができる。悪魔の取り分が発生するのは新品の樽しか使わないバーボンウイスキーだ。空になったこの新品の樽に水を少し入れて振ると香りの良い原酒が樽から水に溶け出してくるのである。原酒が溶け出たこの水を使ったウイスキーもあるほど、香りの良さが特徴だ。 ジムビーム「デビルズカット」とは ウイスキーの製造元のジムビームでは悪魔の取り分を取り出す手法で特許を取得している。独自工程で取り出された原酒がブレンドされたジムビームのウイスキー「デビルズカット」は、強い甘みとバーボン樽のバニラのような香りが特徴だ。店頭や通販でも販売されているため、バーボンウイスキー好きは一度試してみることをおすすめする。 商品情報 3.